八王子のモノレール延伸について



先日、八王子市の「公共交通とまちづくり(多摩都市モノレールをどう使うか)」というフォーラムを聞きに行きましたが、大学教授の基調講演を聴いたらがっかりして、途中で帰ってきてしまいました。
いわゆる立川モノレールをどうしたら八王子まで延伸できるかという話で、市長や商工会議所会頭も出てきての催しですが、これからは少子高齢化で人口が減る一方で、老人など弱者が増えるという視点が全くありません。モノレールというのは建設にお金もかかるし、必ずしも使い勝手の良いものではありません。運賃も初乗り200円以上になるのではないでしょうか。町田市が以前に調査を試みたそうですが、動き出さないのはその証左です。モノレールの建設が決まったとして実際に利用できるまでには、どんなに早くても10年後でしょう。そのときにどのような人口構成(日本全体、東京全体、八王子市、多摩地区)になるかを見極めて議論しないと、えらい話になってしまいます。
海外では、ライトレール(LRV)というチンチン電車の現代版乗り物が発達しており、人口10万以下の町でも導入されています。イギリスにはそのための研究センターまで発足しました。低床で老人でも手軽に乗れるし自転車も持ち込めるというようなコンセプトです。日本でも熊本、広島、富山などに実施例があります。富山の市長は講演で全国を飛び回っています。架線のないものもあります。架線を地面に埋めてしまい、電車が来た時だけ電気を送るようにしたもので、景観に配慮した最近の傾向です。
私は必ずしもライトレールを推奨しているわけではありません。ただ、安易にモノレールを延伸すれば便利になるという考えに疑問を持っているのです。ライトレールも市電が走っているような都市ならともかく、全く新しく引くとなると、反対も多くて結構大変でしょう。クルマの邪魔だという意見が必ず出ます。でもこれからはクルマを運転できなくなる人が増えるのです。
私はむしろミニバスを頻度良く、既存のバスや電車と有機的なネットワークを作って走らせるのはどうかと考えています。私の団地は老人率(65歳以上の人の比率)41%、人口も越してきてから10%くらい減っているのではないでしょうか。自慢じゃないけれども15年後の日本を早くも先取りしてしまいました。八王子にはそんな団地ばかりです。多くの老人が東京都の格安パスを持っています。バスの乗り降りを見ているとパスを使う人ばかりです。高齢化でクルマが減ってくれば道路もすくのではないですか。ミニバスで活発に出歩けるよう、商店街だけでなく公園やグランドなどを結んで、健康管理にも一役買わせるのはいかがですか。
バスの欠点は時刻どおりに来なくてイライラすることですが、それこそICT(情報通信技術)を用いることで、停留所にどこ行きのバスがいつ来るかを表示すれば解決できます。停留所にはベンチを用意してもらいたいものです。電気バスも結構ですね。こんなことこそが補助金の有効な使い道ではないでしょうか。
東京では膨張よりも人口の都心回帰が進行しています。八王子の東、都心寄りにある立川市は、米軍基地の跡地が広大で、新しい企業や官庁がどんどん進出しています。モノレールでつなげても、立川の商圏が膨らみ、八王子からの流出が増える一方だと思うのです。モノレールを引くことによって大型団地の建設や工業団地誘致を行う、高度成長の再来を夢見るような政策の危うさは、市民レベルでよく監視しておかなければなりません。  
(2015.2.21)