短歌

    私の絵の先生に小菅暢子さんがおりますが、同名で短歌の世界にもおられました。
最初は同一人物かと思いましたが、絵の小菅先生に訊いたら別人とのことでした。
ところが読売歌壇で、短歌の方の小菅さんが亡くなられたことを知りました。
小菅さんに関して選者の俵万智さんが、3月2日に追悼の歌を寄せていたからです。
「選評を何度書きしかワープロに『のぶこ』と打てば『暢子』と変わる」という歌です。
それより数ヶ月前に、同じ読売歌壇に次のような歌が採択されていました。
「燕飛ぶ五月の空を待つように小菅暢子の短歌を待てり」(俵万智選) 
そこで私も「投稿歌たどれば見ゆる老いも病みも小菅暢子の歌を待ちつつ」
という歌を作ってみたのです。絵の小菅先生も会って見たいといってましたが、
身も知らずの人に慕われ心配されるなんて、歌壇も捨てたものではないです。
ご冥福をお祈りします。なお絵の小菅先生も暮れに転んで入院とか。お大事に。
                                   (2015年3月13日)

 突然、団地の短歌の会への入会お誘いがありました。
短歌に興味がなかったわけではありませんが、寝耳に水に近いお話です。
せいぜい新聞の短歌欄を斜めに見る程度だったのですから。
絵を描いているTさんから、展覧会の会場で誘われました。
Tさんは、それはもう絵の道では大変なベテランで
あまりお近づきはなかったのですが
あるいは絵に関して少しはご指導が得られるかもしれないという下心もあって
じゃあ、やってみようかとなった次第です。
なにしろ90歳以上の方がお二人もおられるのですから頑張らないとね。  
私が参加した第1回目の皆さんの作品の代表作を挙げます。

突然の病にかかり思うこと
  人の命の微妙な成り立ち  ていじ

稚拙ゆえ涼しく生きて来た私
  八十を過ぎても何も変わらず  きぬえ

公園の散策に遭う花水木
  ほぐれゆきしは遠き青春  きんじ

では又と改札口で挙手の礼
  ふりむきふりむき友は去りゆく  ひろこ

朝の陽の光集めてほろほろと
  花房ほどき藤咲きいたり  さちこ

朝の陽に凍雪光れる赤岳に
  登りし夏の日ははるかなり  むつお

夕餉時友よりいただく竹の子は
  春の香りをやさしく添えり  けいこ

雑草と軽くも云うがつつましくも
  我が花これときりり咲きをり とうじ



毎月一人3首持ち寄るというのですね。順番に自分の歌の解説をして
皆さんの感想を待ちます。最後に主宰者がこれが良いのではないかと1首選んで
次の人の歌に移るという具合です。
ぎりぎりやられて厳しいのではという危惧があったのですが、皆さんお優しく
これなら継続参加できるかとなった次第です。
ちなみに私が用意していた1首は、黒板もなくて披露できませんでしたが

マンサクの紅き垣根の先に見ゆる
大声で往く進級の児等   びん


というものでした。おいおい披露してゆくことと致しましょう。

2014年5月27日

 
不揃いの林檎はありやスーパーのケースでどれもすまし顔して

故郷より今年も梨の小箱来る放射能検査済の付箋を貼りて

百円ショップの絵の具手にして思ほえり作る売る買う人の諸事情(あれこれ)

樹液みちて薄くれないに染まりゐる桜小枝に春の雨降る

雛壇を組めるあいだは飾るらんか子抱きて買ひし木目込みなれば

春の日の光か細し路地裏の行き止まりまで温むに足らず

関数に気温を入れて膨らみの累積で知る開花時期とは

霞町その筋向かい花園町涅槃のごとき吾がふるさとは

ボケ防止には英会話学ぶべしキッパリ断ず傘寿のおとこ

シオデには鈴蘭の如き小芽あり露含むままそっと摘み採る

雪の降る夜は哀しみ募りけり春の卯月の花まつりにも

新聞全紙カナにて埋める抑留者凍土を覆う墓標さながら

朱に燃えるトキワマンサク見つむれば朱色にひそむ哀しみの見ゆ

遠赤外線毛布悦ぶ老友にイワシノアタマの言葉呑みこむ

降る雨を憂しと思うな陽もどれば真珠の如きひかり残さむ

訃報聞けばなぜか近しく感ずとう彼亡くなりて何想うべき

雲一つなき五月晴れ輝ける残雪で応う巻機(まきはた)山も

(2016年2月7日)


蔓バラの花弁ホロホロ落ちにけり 暦めくれる六月の朝

女工哀史も中にはあらむ製糸場 ガイドは栄光るると述べをり

残雪の巻機山(まきはたやま)に早蕨を 摘めば水田の広がるを見ゆ

2014年6月6日

送り火の熾で点せし線香花火 ゆらゆら揺れてぽつり落ちたり

何処よりはろばろと来し蕎麦の種 引込線に白く咲きたり

四十八歳の抵抗のごと どくだみは 汁の臭いと深き根隠し

シーザー像ためらい筆の小舟にて 右に左に揺らぎ居るかな 

長野県川上村のレタスなれば 天吸い尽くし瑞々しけれ

雨風の強き日よ線香を先ずあげて 今亡き人の遺作を借りる

2014年10月2日

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